今回は思い出話
ハロウィンも終わりクリスマスが近くなってきた。この季節になると、思い出すエピソードがある。
小学生だった頃は親戚付き合いも多く、夏休みや冬休みに親戚の子供たちと遊ぶために良く泊まり歩いた。夏休みも中頃、1つ下の親戚の男の子(A男)と叔父の家に行った時のこと。
そこで、とても可愛らしい姉弟が迎えてくれた。普段、畑で駆け回っている私とは違い、過ごし方も遊び方も違って大人しいのだ。私はその家のハイソな、今で言うセレブっぽい品の良さを感じさせる家族の空気感が好きで、良く遊びに行っていた。
成長期に突入した私やA男が、その家で一緒にご厄介になるのは今回が初めてで・・・事件は夕飯時に起きた。
お風呂上りに用意された夕食を見て言葉を失う。子供用のお茶碗にお味噌汁、三切れの刺身。
「おばちゃん、用意手伝うよ?」
他にも何か用意されているのかと思い、A男が食事の支度を進言したが、帰ってきた答えは「終わりよ?」と。何か機嫌を損ねたか?叔母の態度を見る限りそうではないらしい。何よりも、天然系の優しい叔母が、意地悪をしてくるなど考えられない。
狐につままれたような感じだが、私たちはその夕飯を食べて就寝した。その夜、とてつもない空腹感と、隣の布団からは、A男のお腹の音と切ないため息が聞こえたが、自分もお腹が鳴ったのを聞こえないように頭からタオルケットをかぶってお腹を押さえて寝た。
後日、母に楽しかった?と聞かれ「うん」と答えたが、歯切れが悪かったのはA男も同じようだった。それから4か月後、叔父から姉弟が一緒にクリスマス会をやりたいと言っていると提案された。
私もA男も「おばあちゃん家で!」と、叔父の家に行くのを躊躇っていると、プレゼント交換もしよう!と提案してくる。
ああ、叔父や叔母の善意には申し訳ないけれど、あのひもじさはトラウマだ。あまりにも二人で渋っているので、親達が聞いてきた。
私たちが事のあらましを話し終えた後、親達は呆れたような感じで頭を抱えていたが、育ち盛りの子供が食べる量を叔父に正直に伝えたようだった。叔父自体もまさかの少量に、「すまないことをしたね。気にせず、今度はちゃんと用意するから来てくれるかな?」と食事の量を考えてくれることを約束してくれた。
低学年生で小食の子供たちを相手にしていたため、走り回って体も大きい高学年の食事の量が分からなかったようだ。
クリスマスイブに集まった私たちは、正直に言えなかった事を謝った。笑顔で迎えてくれた叔父と叔母の優しさが有難い。
部屋に飾られた大きなクリスマスツリーに、部屋の装飾がクリスマス仕様に交換されている。やっぱり、とても上品で素敵な空間だ。テーブルには私たちの親からのアドバイスを聞いた叔母が、美味しそうな手料理やケンタッキーを並べてくれている。
ゲームをしたり食事をして、ケーキを出してくるとプレゼント交換が始まった。私の母は料理上手だが、それとはまた別の全てが温かい空間がそこにあった。きっと私は大人になっても忘れないだろう。
今でもお客さんをおもてなしする時に、あのクリスマスのような温かさで迎えたいと思っている。そして、お腹いっぱいになって帰ってもらいたい。この二つは私の教訓だ。
腹を割って話してくれた親たちに感謝だし、それを受け入れてもてなしてくれた叔父と叔母に感謝だが、就寝時にA男がこっそりあんパンを見せて「これ、いらないよね」とリュックの底に忍ばせていたのは内緒の話だ。
