11月になると、徐々に部屋が乾燥する日々が続く。この時期、厄介なヤツが加湿器に蔓延る。毎日洗っても、いつの間にか加湿器の中にぬめりと共にピンク色が増えていく。驚くのは、その異常な増殖力だ。
事件は月曜の朝に起きた。
昨日きれいに洗ったらしいのだが、ピンクのぬめりカビが水際に沿っているではないか!部屋干しで湿度が40%だったので、加湿器を絞っていたのが良くなかったのか、10時間放置した結果だった。
いや、たかだか10時間で蔓延するはずがない。ヤツはもっと前から爆発的に増殖する機会を窺いながら潜んでいたのだ!
目の前の加湿器をのぞき込むと、ふてぶてしくピンクのカビが勝利宣言を挙げている。
「にゃろぉ~」
カビ相手に「このカビ野郎!」などと叫ぶのは気持ちが許さず、思い余って猫の鳴き声のような呟きをしてしまった。確か、某漫画で「駆逐してやる!」と叫んでいたキャラクターを思い出しながらも、勝ち誇るピンクのカビを見つめた。
精神衛生上も環境衛生上もすこぶる悪い。このままでは、いけないのだ!このカビを放置してしまうと、雑菌だらけの加湿器が肺炎を起こすようなカビを撒き散らすことになる。
雫型の可愛い加湿器の構造を考えて、ピンクになった箇所をチェックする。すると、メーカーもしっかりと構造を考えてくれているのだろう。少しの溶剤を使っても大丈夫そうな場所だけがピンクになっている。
私はいろいろ考えて、重曹やクエン酸ではないものを選んだ。キッチン収納から最終兵器「ハイ〇ー」を取り出した。酸素系と塩素系があるが、衣類用の酸素系ハイ〇ーの方が良いのだろうが、今回ばかりは塩素系を選んだ。
希釈していても全体にしてしまうと、いろいろ不具合がある。ビニール手袋をし、換気扇を最大にして準備する。5%希釈溶液を綿棒で塗布していく。あくまでも、カビの居るところだけだ。綿棒が届き辛い部分にはキッチンペーパーを希釈溶液で濡らしてペタリと貼り付ける。
「滅殺!・・・思い余って言い過ぎた。成敗!」
心の声がダダ洩れになっているのは仕方がない。それくらい憎いヤツなのだ。
10分ほど置いてから流水で落とす。カビの色が無くなった状態を確認してから、根気よく洗い流すのだが。ハイ〇ーの成分、塩素系の次亜塩素酸ナトリウムは人体に良くない。少しでも残ると、相手は加湿器だから当然室内に散布されてしまう。
よって、給水タンク部分は洗い流しと、塗布部分を水に浸けて臭いが薄まるのを待つ。土台の方は、電気系統に水が入らないようにしながら、ひたすら洗い流すのである。最後に滴った水気をふき取る。
カートリッジも同様に、希釈溶液をボールに作り沈める。こちらは20分ほど置いて流水で良く洗い流し、キレイに洗ったボールに水を張って20分ほど付け置く。その後、良く洗い流して乾かす。そのまま使う場合は、なるべく水を切ってセットする。
ここまでやってホッっとするが、まだ気は抜けない。
なぜなら、我が家には臭い感知器ならぬ臭い感知猫がいるからだ。我が家の猫様にとって、お世話になったとはいえハイ〇ー臭がする環境は好ましくない。温かい部屋に設置する加湿器は、無害の状態でなければならないのだ。
全てをセッティングして加湿器の前に立ち、スイッチを入れる。やはり、ここは次亜塩素酸のアレルギーを持つ自分がテスターになるしかない。
「臭い無し。肌ヒリヒリ感無し。」
洗浄時に既にアレルギー反応で顔は荒れていたが、加湿器の蒸気にあたっても平気だった。敵は撃退されたと言わんばかりに、ガッツポーズを決める。
実に恐ろしきはカビの増殖力。見えなくても定期的に殺菌という洗浄以外の工程も家事の中に入れようと心に誓った。
ふと、傍にいた愛猫を見つめた。大あくびをしている彼女は、今日もおっとりと優雅に過ごしている。
