愛猫が我が家に来たそもそもの始まり。

春先から裏の公園で見かけていた黒猫の子猫。人懐っこく、優しい性格の子猫は近所の家で餌を貰っていたので、当初私たちは飼い猫と勘違いしていた。
ところが、ご近所の方は野良猫なのだという。亡くなった愛犬と同じ黒の毛並みに親近感を覚えた私は「飼ってくれない?」と言われた時に「縁があったら」と返した。
素っ気ない返事に聞こえるかも知れないが、猫は自由気ままな性格だと思っていたので、家猫にするには『猫の承諾』も必要だと思ったのだ。
日参しているお寺の門から出た直ぐの駐車場で、彼女は私たちに訴えるように鳴いていた。ニャーと鳴いてすり寄って来たので、ご近所さんの愛情でここまで人慣れしているならばと思い、猫に話しかけてみた。
「ウチの子になる?なる気があったら、家にきてね。」
「ナー」
主人も私も、この時はまだ彼女が私の言葉を理解しているとは思わなかった。
しかし驚いたことに、次の日お参りから帰ると、彼女は玄関先にちょこんと座って「ニャー」と鳴いた。
それはまるで、家猫になりに来たニャ!と言っているような感じだった。


主人と私は猫の意志に沿うようにしてみた。彼女がご飯だけを求めているのか、家に入りたがっているのかの判断がつかなかったからだ。
しかし、それは杞憂に終わった。外でご飯をあげて、次の日には玄関先の場所で、その次の日には玄関の中で。数日後には家の中で私たちにじゃれる様になっていた。
玄関ドアを閉めても、焦ることは無く探検を楽しんでいるので、私たちはこの子を迎える事に決めた。
一回外に飛び出してしまったものの、台風の突風が怖かったのか、台風の目の時に探しに出た主人に保護されてからは、自分から外に出ようとしなくなった彼女。完全に家に馴染んだので、獣医さんに診てもらった。寄生虫がいたが退治できたので、ワクチンを打って飼い猫になってもらうための相談もした。
ご飯も食欲旺盛でしっかり食べてくれるので、環境の変化によるストレスは回避できた様だった。不思議なことに、彼女は一回ダメと言った事はやらないといった物わかりの良さがあった。だから、自由じゃない分、ストレスが溜まらないか心配だったのだ。


知り合いからアドバイスとキャットタワーを貰い、玄関廊下と居間を彼女のテリトリーにした。好きな場所に居てもらいたかったが、洗濯機や電子レンジ、冷蔵庫の裏など猫にとって危ない場所は多い。
いくら彼女が、物わかりが良いとはいえ、台所への侵入を許すことは事故に繋がるだろうと、主人と私は考えた。
日に日に穏やかな表情になっていく彼女に、快適に居てもらう為に台所ゲートを作ることにした。
