猫が引き起こすデジャヴと二面性?

デジャヴ(既視感)を感じることがあるだろうか?奇妙な感覚の現実。

 ウチの愛猫は子猫時代を野良として過ごした経緯は以前書いた。そして、野良時代にお世話になった先輩猫たちが確認に来ることも『愛猫のための我が家の大改造7』で紹介したのだが。

 今回の話は、毎日入れ替わり立ち代わりでやってくる先輩猫たちについて書こうと思う。

 主人がテレワークで仕事をしていた、数年前のある日のこと。居間の窓から先輩茶トラじいを見つけた愛猫が、和室の雪見障子のガラス部分へと走って来た。

「ニャ~ァ”~」訳:元気にしとるかのぉ

 そう思わせるような、風格のある鳴き声をウチの愛猫にかける。いつもはそれで終わりなのだが、今回は、その後に黒と茶色のトラ猫が来たらしい。ゆったりと歩いて中にいる愛猫を見てからどこかに行ってしまったようだ。

 丁度その時、私も外から戻って来た。その時、猫を見かけたのだが、主人の言っている猫ではなかった。私が見かけたのは、黒と黄土色のまだら模様の錆猫だったからだ。

 夕食を食べながら、ウチの愛猫は近所の先輩猫たちから気にかけてもらえて幸せだと話した。振り返ってみると、愛猫は「シャー!」と怒ったり、噛みついたりしない。強いて言うなら、真っ暗な部屋でガラスに映った自身にビックリして「フミャァ~ァ!」と叫ぶくらいだ。

 お出かけゲージに入れるために抱っこして嫌がっても、手を突っぱねて『やめてニャ』とアピールするだけである。棒にトンボがくっついたお気に入りのおもちゃで遊んでいる時ですらも、爪を丸出し状態で引っ掻くのは最後の手段で、両手をあげて引っ掻く真似をしているだけだ。

 おおらかなのか?気遣っているのか?猫らしからぬ猫。

 野良猫だったとは到底思えないくらいに、優しい愛猫だなぁと二人で話していて気がついた。先輩猫も『シャー!』『フミャー!』とは、ウチのご近所では聞いていない。

 地域猫の特性なのだろうかと考えてみたが、答えは直ぐ傍にあった。

「〇〇さんだ!あそこでご飯を貰えるという情報が猫の中にあるから、猫は大らかだし猫同士助け合っているんだな・・・凄い!〇〇さん!」

 夫婦揃って納得である。ご近所の〇〇さんの家は、猫にとって炊き出しの場。そこに集まる猫は、猫を面倒見ている。強者は弱者をかばう。あえて動物世界の弱肉強食を強調するようなことをしなくても、平和で助け合う世界でやっていけれると、猫たちは学んでいたのだ。

 動物保護で猫に餌をあげ続けるご近所さんの凄さも、そのご近所さんから絶え間ない愛情を貰って平和な猫社会を築いている猫たちも、素晴らしい人や猫である。そのおかげで、猛禽類がたまに来たりカラスが結構いるこの地域で子猫は守られているのだし、ウチの愛猫も守られたからこそ、ウチに来たのだから。

実に奇跡のような、素晴らしく有難い話なのだ。

 そんなご近所さんの素晴らしい活動に感謝しつつ、あまり見ない錆猫のことを訪ねてみようと思った。


 そんな話をしていたある日、そのご近所さんとバッタリ会った。そこで、ご飯を食べに来る猫たちについて聞いたのだが、主人が見た黒と茶色のトラ猫も、私の見た錆猫も食べに来ていないし、見かけたことも無いという。

 通常、コミュニティー外の猫同士が網戸越しとはいえ挨拶をしたり、怒らないで挨拶をしたり他のトラ猫じいの後ろを歩くだろうか?その猫たちの気性が穏やかだったのだろうか?

 だとすれば、この地域猫の環境は猫島のように大変優秀なのでは?と感心してしまう。

 ご近所さんに聞いてから数日後、在宅で仕事をしていた主人の前に話題の猫が現れた。しかし、その現れ方が変だった。

 お昼前の温かい陽気に誘われるように、左側から右に通り抜ける様に黒と茶のトラ猫が和室の前を通りかかった。部屋の前でいったん止まり、愛猫が駆けつけると横目でチラリとみて歩いていく。その後、同じ猫が数分もしないうちに、再び和室の前を横切るように左から右へ歩いて行った。

「さっき通ったような?」

 一方通行のように左から右へと歩いていく黒と茶のトラ猫の行動に、主人は奇妙なデジャブを感じて思考が止まったという。

 その話を聞いた私は、猫がグルグルと我が家を回っているのでは?と思ったが、ウチの愛猫の反応がそれを否定した。猫が来ると、その通り道にある窓に向かって走るからだ。その時、愛猫は和室の窓から動いていないらしい。

 そして、その奇妙な現象は、再び起こった。

 映画の『マトリッ〇ス』で黒猫を見た主人公が「デジャブ?」というセリフがあるが、それを追体験するような出来事だ。

 奇妙な世界に入り込んだような出来事。しかし、その答えは意外な結末を迎えた。


 お寺からの帰り道、遠くに錆猫を見つけたのだ。慌てて追いかけると、くるりとこちらを見るではないか。

「はい?あ・・・錆猫?ああ!なるほど。」

 草むらにちょこんと座わり、此方を振り向いた錆猫の顔は・・・

ピカソの絵のようだった。

 正面から見た猫の顔は、私から見て左が黒と茶色のトラ猫。右は錆猫だったのだ!しかも、身体までも同じように半分半分の模様。

 一瞬で、主人の言っていたデジャブの正体が分かったが、笑いが込み上げてくる。

 主人によくよく聞けば、黒と茶色のトラ猫が通った後に錆猫が逆方向に歩いて行ったと言うので、もうこれはこの猫の一猫二役だったのだろう。

 ウチの愛猫が気になって、本人はただウロウロしていただけだったというオチである。思わぬ答え合わせに、私たちはお腹を抱えて笑った。

 世の中、二面性を持った不思議な猫がいたものである。

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