しつけの話です。主人と私の間に伸し掛かる相違点。笑い話にしかならない。トホホな私達。

とある日曜日の出来事。

催事場のような場所で『子犬と触れ合う場』があったので、見ていた時のことだ。

「可愛いなぁ」と柴犬の子犬に夢中な主人を見て、ここで決まるのか？と思っていた私。ふと、目を離したすきに３～４ｋｇはありそうな子犬を抱っこして満面な笑顔になっている主人に駆け寄った。

「可愛い柴犬見つけたよ！」

「「それは秋田犬だよ！（です！）」」

催事場の案内役の方と声がかぶり、主人は驚いて子犬をマジマジと見つめている。

「その子、足が大きいから、大型犬でも大きくなるよ。初心者で大型犬飼うの？散歩量半端ないよ？」

案内役の方もお勧めしないと言っている。しょげる主人が選ぶ子は、大型犬か中型犬。柴犬は柴距離なるものがある。ベッタリしたい主人には不向きと判断されたのだろう。

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探し始めて数か月が経ったある日、犬の知識も、店員に聞くコツも習得した主人。すっかり犬探しを諦めたのかと思って、ホームセンターを訪れたのだが。

その日の主人は、引き寄せられるように子犬コーナーに向かっていった。チワワやミニチュアダックスや柴犬、コーギーと見て一点に視線が止まる。

「甲斐犬（かいけん）？」

「それ、シバイヌと同じで、カイイヌって読むんだけど、皆、カイケンって読んでるよね。」

そこへ店員のお姉さんが「抱っこされます？」なんて聞くので、二つ返事で主人は頷いていた。そそくさと手の消毒をしてスタンバイしている。長くなると思った私は、他の売り場を見てくると言って、その場を離れた。

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木材の目星をつけた私が戻ると、主人は甲斐犬を大事そうに抱っこしている。

「まだ抱っこしていたの？」

「買っちゃった！」

なぬ？

驚く私に、主人は抱っこしている犬を飼う手続きをするという。別に反対ではなかったが、笑顔の主人に言わなくてはならない。この子犬の為にも。

「買っちゃった！じゃないでしょ。

その子犬中型犬よ？散歩も運動量も半端ないの分かってる？１時間以上の散歩を朝と夕方の２回！他にも遊んだり、犬にとって躾とか教え込まなくちゃいけないし、責任を果たさないとこの子が可哀想なんだよ？命を預かるの。だから、時間無いからよろしくなんて甘い考え起こす気だったら、返してらっしゃい！」

一気にまくし立てた。受付の担当者は呆気に取られていたが、覚悟の問題を聞いているのだと分かったのか、口を挟まない。

「どんなに疲れてても、早朝と夜中の散歩を３０分ずつするから、朝と夕方の散歩お願いします。」

なるほど。瞬時に時間分けを考えたようだった。それはそれで良いと思った。私が「躾は？」と問うと、「自分には分からないから、教えてくれればちゃんとやる」と言う。

これはとても大切な決意表明なのだ。愛犬の命に直結する部分だからこそ、この場で決めないといけない。

可愛い、欲しいだけの気持ちだけでは超えられない部分もあるのだから。老犬になった時、愛犬に快適に過ごしてもらえるよう、愛犬への愛情を持続してもらわないといけない。

「やらなかったら、ペナルティ取るからね。」と付け足して、クリスマスイブに愛犬は我が家にやって来た。

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愛犬を迎えたクリスマスイブに、ゲージ、ご飯カップと水飲みカップ、トイレとトイレシート、ユーカヌバ、リード２種類、犬用シャンプーと首輪を用意した。

まだ２ｋｇの子犬だった愛犬は、親元を離されて２日目だったのか甘えんぼでお茶目な子。でも、トイレを覚えているらしく、とても賢かった。

何が賢いかというと、歯が生え代わる時期に椅子や机の脚を齧る子がいるのだが、一回注意しただけでやらなくなった。教えたことは直ぐできるし、とても理解力のある子なのだろう。

躾はとても順調そうに思えた。散歩が始まるまでは。