愛犬愛猫の教育?について 名誉の負傷

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しつけの話です。主人と私の間に伸し掛かる相違点。笑い話にしかならない。トホホな私達。

愛犬は、中型犬の甲斐犬の女の子。

愛犬は自分のして良い事と悪いことをしっかり理解していた。

そして、とても頭が良く、人間と対話しているかのような感覚に陥る時もあった。

そんな彼女が、不本意にも私の手を傷つけてしまったのは2回だけ。どちらも、彼女の意図することではなかった。それに、愛犬を死守するための名誉の負傷と考えればいいかなと思う。


1回目は、子犬(4kgぐらいの頃)部屋の中に畳一畳分のパーティションで区切った柵の中に小さなゲージを入れ愛犬の場所として、居間の場所とを区別するトレーニングしていた時のこと。

ギャン!という声が聞こえ走り寄ってみると、手をゲージの柵と柵の間に挟まれている愛犬の姿があった。すぐさま、私は愛犬を抱き上げようとしたが、次の瞬間。

ガブリ!

盛大に手を噛まれてしまった。しかし、人間追い込まれている時は至極冷静になる。

「そのまま噛んでるんだよ。」

噛まれた手を愛犬ごと持ち上げ、ゲージの間に挟まった前足を取った。痛くなくなった途端に愛犬は噛むのを止め、無事に自由になった。

しきりに私の手を心配しているが、私の心配は愛犬の前足だ。自分の手の甲に出来た穴など取るに足らない。

消毒をしながら、愛犬の歩く状態を観察し、主人と動物病院に連絡を入れた。獣医さんは足に異常が無いか診察をしたいと言ってくれたので、主人にも連絡を入れて愛犬を病院まで連れて行った。

幸いにも、愛犬の前足に異常は無かった。獣医さんに、私の傷も見てもらえませんか?とお願いしたが・・・。

教訓1:獣医さんは動物しか診ない。人間の医者に行くよう勧められた。当然か。🤣🤣


2回目は、ちょっと厄介な相手が、狂気の沙汰と思えないくらいの奇行に出て噛まれた。

愛犬と土手の上を歩いていた時のこと、愛犬と相性の悪い犬を連れたおばさんが土手下の車道を歩いて来た。距離が近くなるにつれ、相手も愛犬も威嚇モードに入ったので、リードを短くして通り過ぎようとしたのだが。

何を考えたのか、そのおばさんは土手を登って近づいて来たのだ!

「威嚇しあっているので、近づかないで下さい!」

私は焦って、相手を制止した。しかし、相手は「大丈夫よ~」とガルルルルと泡を吹いて吠えたてる自分の犬を近づけて来るではないか!

「やめて下さい!近づけないで!!」

私の声はかなり大きい。方々に響いて、散歩中の人たちが足を止めてこちらを見ている。必死にお願いしたのだが、「顔を突き合せたら仲良くなるから」などと、今のこの状況で狂気の沙汰としか思えない事を言い出した。

「来ないで!!」

この状態で愛犬を抱くのは、非常に危険だ。半狂乱の二匹なのに、近づいてくるおばさんは笑顔というホラーな状況だ。後退りしながらも懸命に距離を取っているのに、おばさんが近づけて来るイタチごっこ。

「おい、危ないじゃないか!近づけさせるな!」

道行く男性や女性が走ってくるのが見えたが、おばさんがもっと距離を詰めてしまったので、鼻っ面30cmのところまで来てしまった。

私は咄嗟に愛犬の首に手を回した。このままでは、殺し合いになってしまうからだ。私の身体が噛まれるくらいどうってことない。ここは死守だ!

「嫌がってるだろ!」

愛犬の首に手を回して後ろへ退こうと引っ張っているのだが、このおばさん、まだ近づけて来る。絶望てきな状況で。

ブチッ!

「い゛ぎゃああああああ!」

私の叫びが、辺りに響き渡った。

首を抑えていた右手の親指に、半狂乱になった愛犬の奥歯が突き刺さったからだ。私の悲鳴で我に返り、愛犬はゆっくりと口を大きく開けてくれた。

親指から滴る、血。

ボタボタと血が落ちて小さな血だまりを作っていく。

私の流血を見てようやくこの状況が危険な状態だと気づいて、おばさんが犬と共に数歩後退りした。その間も、おばさんの犬は唸っては吠え牙をむき出しにしている。

「聞いてたけど、あんたさ、自分の犬がそんな状態で仲良くなんか出来ないだろ!その犬、社交性ないだろ・・・いつも他の犬に吠えられてるじゃないか。」

私を庇う様にして立ってくれた男性が、おばさんを叱ってくれているが、申し訳ないことに痛みでそれどころではない。愛犬は心配そうに私の指を凝視している。自分が噛んでしまったという自覚があるようだ。

それなのにおばさんは、私たちの横を通ろうと近づこうとする。焦ったのは私もだが前に立った男性もだった。幸いにもウチの愛犬は、もう相手の犬には反応して無い。

「さっきまで歩いていた土手下に降りて下さい。私はこの通り片手が使えないから、愛犬を抑えきれない。」

私は穴の開いた親指を突き出して、私たちに道を譲るように言った。これは間に入った男性の安全も確保するためでもある。これ以上の被害は御免被りたい。

犬たちの名誉の為に書いておくが、犬たちに非は無い。100%悪いのは、犬の習性を無視した思い込みで行動をする人間が悪い。

(今回のような状況は『犬のけしかけ行為』となり、通常は暴行罪の枠組みに入るらしいので、気をつけて欲しい。)

見せている親指からは、未だに血が垂れている。血を見て顔を引き攣らせているおばさんは、ゆっくりと土手を降りてくれた。この時、痛みより『この場をどう安全に切り抜けられるか』という事の方が思考を支配していた。

ジッと見つめ、相手が土手下の道を行くのをジッと見つめる。横で庇ってくれた男性が深く息を吐きだして安堵している。

「おばさん、今後、私達を見ても傍にこないでください。これはお互いが怪我をしないための警告です。犬はね、忠犬であればあるほど、飼い主に怪我を負わせた原因を許さないと思うから。」

「あんた、この子に一言ないのか。」

おそらく、頭の中はパニックになっているのだろう。でも、これだけじゃ『のど元過ぎれば・・・』で繰り返し、他に犠牲者が出る。もし、子供が連れた犬にこんなことをされたら、大惨事だ。この辺りは、小学生くらいが中型犬を散歩させているのだから。

「これから医者に行きます。経緯を聞かれるかもしれない。私はあなたがしたことを正直に話します。病院から警察に通報が行くかもしれないし、ないかも知れない。

二度と誰にも、どの犬にも、お宅の犬を近づけさせないで!絶対に!

ここは謝罪要求したり医療費請求しても、同じことをするだろう。そして、次の被害者は私以外の誰かであり、おばさんの犬が保健所に引き渡される結果になる。しっかり、こういうことをしたら代償はでかいのだと理解させないと、この手の相手は学習しない。

要求は他の犬に自分の犬を近づけさせない事一択だ。なんせ、犬の本気の威嚇を理解できていないのだから。

「二度とこんなことしないでください。」

小さく頷いて、逃げるように去っていくおばさんが曲がり角に消えた。横にいる男性が心配そうに聞いて来た。

「だ・・大丈夫かい?」

「ありがとうございます。今は興奮しているからか、痛みはあるけどまだ平気な感じなので。助けて下さって、感謝します。ありがとうございます。」

丁重にお礼を言って、親指を絞るように血を出す。男性は驚いていたが、流水で洗えない今は、雑菌は血と共に絞り出してしまう方が、後々楽だ。

ドン引きしている男性と少し離れたところに女性が立って心配そうに見ていたので、深くお辞儀をしてその場を離れた。

ほんの少し歩き始めると、痛みがズキズキしてきた。立ち止まっては血を絞り出し、それを繰り返しながら家に着いた。道すがら、何人かの知り合いに合った気もするが、痛みで朦朧としていて覚えていられなかった。

愛犬の足ふき持つと、この日初めて足を上げてくれたので、片手で拭くことが出来た。基本、愛犬は家で自由なのだが、この日から傷が塞がるまでずっと私の傍を離れなくなった。


すぐさま、病院に電話して指示を仰いで予約にされた。待ち時間中を処置時間に割きたかったこちらの事情を組んでくれたのと、こう言いう傷は時間が勝負だと分かっていたので、病院側から予約の形を提示してくれたのだ。

後は私が痛みにどれだけ耐えられるか、だ。

かなりな状況ではあったが、片手で消毒液と化膿止め軟膏、携帯、そして、愛犬のご飯と水を早めに入れ替え、意識が飛んでも大丈夫なようにして、傷の応急処置をする。

流水で数分洗い流す。爪の真ん中が割れて、親指の腹に穴が開いているのを凝視しつつ、タオルを口を噛んで、衝撃に耐えた。垂らされた消毒液が、焼き付くような痛みに気が遠くなったが、これを何回もしなくては化膿してしまうので、続けるしかなかった。

何回か消毒をして、最後に化膿止めを塗り込み、抗菌ガーゼの上からテープ包帯を巻き付け、病院に行く準備をする。

診察を受けた私は、夕飯の支度とか考える気力を失っていた。

教訓2:動物に噛まれた深い傷は、素人がどんなに消毒したつもりでも雑菌が入り込んでいる可能性がある。ゆえに、医者は傷を開いて深さと状態を確認する。

(親指の腹に開いた穴の深さ8mmに達し、爪も割れていたことから、爪が風穴を開けるのを防いだようだと言われた。)

教訓3:犬に嚙まれたら、狂犬病ワクチンを打っているか聞きましょう。病院で聞かれます。化膿止めの他に痛み止めも処方されますが、解熱剤でもある痛み止めは時間と用法を守って服用しましょう。痛いからと言って短時間での服用は物凄く危険だと説明されます。


穴が塞がるまで数週間の筈が1ケ月を要し、家事一切が親指を動かさずに行わなくてはならない不自由が続いた。

それというのも、騒動から10日が過ぎ、心配してくれた犬友達と散歩をしていた時に、あのおばさんが自転車で近寄って来たのだ。

犬を連れていた時に遭遇すると、道を変えて逃げてくれていたのだが、犬を連れていない自分は大丈夫と思ったのか、笑顔で近寄ってくる。友達曰く、笑顔で近寄ってくる意味が分からないと言っていたが、ホラーの悪夢再びだ。

「近寄らないでください!」

今回も制止は聴いてもらえない。しかも「犬を連れてないから大丈夫よ」などと言っている。愛犬は怒りを露わにして吠えていると言うのに。私は友達に犬と共に愛犬から離れるように言った。

このおばさん、人の話を聴かない人種なのだ。

「あの時はごめんなさいね。知り合いに話したら私が謝った方が良いって言われて。」

💢

「ちょ、ちょっと、血が出てる!!」

「え?!」

友達の声に指を見ると、包帯に血が滲んできている。愛犬を抑える為、力一杯リードを握ったために傷口が開いたのだ。

愛犬の精神にも良くないし、傷にも良くない。そして勘違いしている相手にも良くない。

「心からの謝罪なら受けたでしょうけど、人に言われたから謝罪なんて、大人のすることじゃない!心籠ってないでしょ。

第一、犬が居ないから大丈夫って理屈が分からない。ウチの愛犬は、あなたの犬とは相性が合わないだけで、心底、怒っているのは

あなたに対してなんだから!」

「えっ・・・・」

ターゲットはおばさん自身なのだと強調して伝えた途端、顔を引き攣らせて後ろに下がっている。もう二度と関わらないで欲しい、愛犬の為にも。

「見て下さい。また血が出ています。傷が開いたんです。謝罪って、相手の状況を無視してすることですか?

私は傷を早く治したかったのに、あなたは無視して近づいた。あなたへの危険を回避するために、私は愛犬を力づくで引き止めないといけない。傷口を開くこの状況を作って、謝罪が通るとでも?」

「早く下がってくれませんか?友達の傷が悪化してしまいます!心の無い謝罪より、彼女たちの前に姿を見せない事のほうが、この場にいる全員が安全です!」

私の言葉の続きを代弁してくれた友達。彼女の柴犬も発されて、おばさんに威嚇吠えをしている。

日本犬にここまで嫌われる人も珍しいかもしれない。

「約束してください。あなたの安全の為にも、私たちを見たら近寄らないこと。この前のような『けしかけ』に近い行為を他の犬にやらないと。」

ここでもおばさんは頷くだけで、そそくさと自転車を反転させると逃げるようにこいで行ってしまった。

また傷口の手当のやり直しだ。通院が伸びるなとゲンナリしていると、友達が『それでも許すんよね。相手の安全なんて言ってたし!』と笑った。

「しっかし、ウチの柴犬まで怒るとは・・・。」

「この子達、怒って吠えるって言うより、文句言ってる感じだったね。」

変な吠え方だったのだ。威嚇しながら喋るように吠えていた。

「何近づいて来てんじゃワレ~💢ボケてんのか!言われたこと守らんかい!」

関西出身の彼女が、ユーモワたっぷりに犬の気持ちを代弁していく。

「大体、謝るつもりがあるんなら、自転車から降りんかい💢って感じよ。」

何だか気が抜けて笑ってしまった。友達と二人で愛犬たちを見ながら笑った。吠えていた彼らは、今は普通だ。

そんなこんなで、私の傷は見事に開いてしまい、化膿止めと痛み止めを飲みつつ2カ月以上の通院を余儀なくされた。


この時の傷は、爪は少し窪み、塞がった後も芯のように残っている。そんな傷でも、愛犬との大切な思い出だ。

愛犬はいろいろなハプニングや面白出来事を巻き起こして、私たちの人生に素敵な時間をくれた。その愛犬が天に召されてしまった時に、私の心を支えたのがこの傷だ。

傷が愛犬の居た証となった。

愛犬にとっては不本意だったかも知れないけど、愛犬の優しさや気遣い、思いやりを感じた日々を思い出すから。

犬同士の喧嘩に発展せずに、愛犬を守れた傷は私にとって今も勲章。

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