人生で何回か、『場違いだ』と感じた瞬間がある。
数十年前に、高血圧で過呼吸になって倒れた父が、次の日にある面接を受けに行った時の話。母と弟に父が倒れない様に、尾行して欲しいと頼まれた時のことだ。
隠し事が出来ない私は、父に事情を話して家族で付きそうことに決めたと伝えた。「大丈夫だ!来るな!」と言っていた父も、往来で過呼吸になったらどうするのか?と言われて渋々付き添いを承諾してくれた。
次の日、新宿駅に降り立った、私と弟、母の3人は、新宿のビルの街並みに圧倒された。普段、東京駅や池袋駅などを歩いている私でも、雰囲気に圧倒されるくらい、新宿のオフィス街の空気感は違う感覚に陥る。永田町や赤坂見附あたりの雰囲気も独特だが、何か違う感じに感じられた。
「俺たち、場違いだよなぁ。」
確かに場違いすぎる。母は父を追いかけるので一生懸命で気がついていないが、弟と私は高すぎる高層ビルとお洒落な喫茶店が立ち並ぶ街並みに、気圧されていた。
父の面接を待つ間、近くのカフェでお茶をしていたのだが、ここにきて母が街並みに気づいてアワアワしている。
テンションが上がりっぱなしだった母を宥めて、コーヒーを飲むように差し出す。薄く作ってもらう様にオーダーしていたが、何も言わないところを見ると、母好みの薄味になっていたのだろう。
1時間ほどして、父が戻って来た。
「近くに定食屋があったから、そこに行こう。」
おそらく父が言っているのは、夜は割烹で昼は定食屋を営んでいるお店の事だろう。しかし、お洒落なカフェに入ってくるなり、そのセリフは如何なものかと思う。定員さんは『何故にここで食べてくれないのか?』と思うだろうに。
もはや、場違いすぎる田舎家族がここに居ては迷惑をかけてしまうかもしれない。即座に会計を済ませに行った。
ビル風に押されつつ、向かった定食屋は準備中だった。新宿の駅ビルか近場のお店に入る方が良いかもしれないと駅に向かい、食事をして帰った。
