好きでしたねぇ。昔のエンジンのNoahは。変な音がしない。
今の車は軽量化されてエンジンが軽く作られているとか。ハイブリットや電気自動車にはない、静穏さ。
実は私たちの車生活は、日産サニーから始まった。(サニーが呼び込む漫画のような事件)お笑いのようなサニー号を経て、TOYOTAのNoahを四駆使用で購入した。約23年の月日を共にした車だ。
こんなにも長く乗ることになったのは、エンジンが切り替わったため。
今のエンジンは普通のエンジン音の他の音が鳴る。そのため、試乗していて耳や頭が疲れてしまうから、直ぐには買い替えられなかったことも理由の一つだ。
私の両耳は鼓膜が2回ほど破れて、低い小さな音や一定の方向からの音が聞こえにくいのだが、不思議な事にエンジン音やブレーキ音の微かな異音を感じ取ることができるらしい。らしいというのは、メカニックの方がそう言っていたからだ。
15年ほど乗っていたNoahの車検時に、メカニックの方が調整した後、試乗して引き渡しになるのだが、異音を伝えていたにも関わらず、いつものメカニック担当の方ではない方が整備されていて、異音の発生源が対処されていなかった。
主人は音の違いが分からなかったので、私を同乗させたが、メカニックの人と首をひねるばかり。私には変な違和感のある嫌な音がやけに大きく聞こえていた。なのになぜ伝わらないのかと、しまいには伝わらないもどかしさとイライラでしていた。
若いメカニックの人は「点検してます。」というだけ。本来の担当者が一緒に乗って、もう一回走らせた。やはり聞こえる異音。
異音の通りに声を発してみた。それで、その音が異音なのかと主人とメカニック主任担当者さんは気づいてくれた。そして、プチ怒りモードになっている私は火事場の耳力とでもいうのか、原因の場所まで分かってしまった。
「ブレーキの構造にベルトとか使ってます?繋ぎみたいな。」
そう聞くと、回転させる部分にベルトが2つあるという。
「その二つ、経年劣化してないか調べてください。多分、それだから。」
なぜ分かったのかとか、なぜそんなことが言えるのかとか、その時のメカニック主任担当さんは何も聞かなかった。
「この音で、それがブレーキ系のベルトの劣化であれば、奥さん耳が物凄くメカニック系の耳を持っていますよ。とはいっても、そういった異音を感知できる人は少ないから貴重です。」
そんな風に言っていた彼の目が、心底驚きに変わったのは、ブースに戻ってそのベルトを点検した後だった。両方のベルトに見た目パッと見ただけでは分からない小さな傷があったと報告された。2つのベルトを新しいものと交換して試乗すると、音は正常になっていた。
その時からだ、TOYOTAで新しい車種が出ても、試乗して今のエンジンやブレーキ系の音に私が疲れてしまうような音がする車種は、メカニックさんの方で私に合わないだろうと言ってくれるようになった。
待つこと8年。技術が向上し、音も気にならなくなるまで、私たちはNoahを大切に乗った。
それでも、まだ耳障りではあるが、頭痛や吐き気はしない。技術の進歩は物凄いものだと感心しているが、TOYOTAさんのメカニック担当の人が、23年もの間乗れるようにして頑張ってくれたから、今普通に乗れている車を買うことができた。
今のエンジンを作っている技術者にも頭が下がる思いだが、私は、TOYOTAの昔の重いエンジンの復刻版のような車が出ないか今も密かに願っている。
そんないろいろな思い出がつまったNoahが今も昔も、有り難い一番の車です。
