マルガリータとパスタスタンプ

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文のお題 (日替わり)
ミドルネームは何ですか ? それには特別な意味がありますか ?

知り合いの家にイタリアから3カ月ほど滞在していた女性から頂きました。会うたびに誠実で真面目で優しい彼女の人柄に、私は3枚の浴衣を縫う事を約束しました。そんな出会いの中で聞いたのが、ミドルネームは聖人の名前を付ける人が多いのだとか。

それを聞いた私は、日本には字(あざな)を付けることも少なく、無い風習だと伝えながら「きっと聖人に感謝するような素敵な名前付けだね。」と返したところ、彼女は「私で良かったら贈らさせて」と考え始めた。

1枚目の浴衣を縫い終えて、彼女に着せ付けながら、幼稚園がカトリックで洗礼時に渡されたペンダントの裏にクリスティーナと彫られていた事を告げると・・・。

聖クリスティーナの生涯は壮絶だったが神の加護で天使に救われた素晴らしい聖人の名前。それなら自分が贈るのは、優しいイメージの祖母と同じマルガリータを贈ると言われた。

そして、カトリックの幼稚園で貰ったのだとしたら、〇苗字〇クリスティーナ・マルガリータ〇名前〇と名乗ると良いねと。

知り合いが、祖母と同じミドルネームを贈った彼女について、信頼と心からの敬意を渡したかったのだろうと説明してくれた。

その後、彼女は、聖クリスティーナと聖マルガリータの二人の聖人はどんな困難な状況でも信仰心を持ち、他者の悪意に屈せず、神の愛を受けた方々なのだと教えてくれた。

ミドルネーム、少しこそばゆい気持ちもあったが、彼女の心からの気持ちを有難く頂いた。

3枚の浴衣を無事に縫い終わって渡すことが出来た。後日、帰国した彼女がおばあ様から貰ったパスタスタンプの一つをプレゼントしてくれた。

イタリアンを習っていたので、師であるシェフにパスタスタンプを見せて使い方を教えてもらった。

「素晴らしいスタンプじゃないですか!使い込まれているから、受け継がれているスタンプをくれたんですよ。とても感謝の気持ちが込められていますよ。」

師の言葉を聞いて、目頭が熱くなった。そんなに大切なものをくれたのかと。

この感謝にどのようにお礼をしたら良いか考えていると、師は笑顔で教えてくれた。

「貴女は日本の文化である浴衣を3枚も手縫いで作って渡した。その心に彼女も家の伝統であるパスタスタンプを贈った。メールか手紙で嬉しい気持ちと写真を送ったら良い」

文化と文化を心の交流でやったのだから、お礼の気持ちを込めてと。

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