運針や造形を考えながらやる裁縫は脳と指先の運動になるんです。
今から数十年前、とある短期大学で和裁と洋裁を勉強した私。どちらかと言うと、縫うのは和裁が好きで、着るのは洋服が好きな人間だ。先日、ドーランの話で和服の思い出を語ったからか、無性に反物が触りたくなった。この場合の『触る』は『縫う』という意味合いで。

柄合わせはこちらが正解

この合わせ方はしない
和裁の何が好きなのかと言うと、『柄合わせ』が結構楽しいのである。少しずらすだけで趣(おもむき)ががらりと変わる。写真の2つの並べ方は、和服の柄合わせでは左の柄の合わせ方が正解。
着物は背を合わせた後に、前に出る衽(おくみ)や衿(えり)の柄を見る。全ては背縫いの部分の柄合わせで決まるのだ。
十数年前に老後の趣味にと、浴衣や着物の単物や道行(着物のコート)を作るか、洋服に仕立てられるような反物を集めていた事がある。浴衣用の反物もかなり揃えていたのだが、これは外国の女性が友達の家にホームステイしていた間に、3枚ほど彼女に合わせて柄合わせをして作り始めようとした時の写真だ。

浴衣は全て手縫いなのだが、縫う前に柄合わせをし、その後着丈+おはしょりの長さでしっかり布が足りるか確認するために、写真の様に折りたたんで出来上がりの予想をたてるのだ。
一反は、幅36~38cmぐらいで、長さ12m以上ある。(昔だと36cmで12mぐらい)
いつも思うが、この反物の柄などを考え染め付けたりする職人さんは凄いと思う。なんせ、このように柄合わせして、その人の着るサイズで折りたたんでもぴったり合う。合うような柄を考案しているのだろうが、凄いことなのだと思う。
着物の作りはシンプルだが、女性はおはしょりという独特な折り返し部分があり、ここで長さを調節できる。

着物のサイズは昔からのお仕立て表があるので、その通りにヘラで縫い目となるようにこすると、木綿生地に跡がつくので、糸と針、まち針があれば縫い始めることが出来る。
後は場所によって、縫い方と処理が変わるのと、『きせ』という1~2mmの縫い目を見せないで被せる部分が無くならないようにアイロンをかけては、縫っていくの繰り返しだ。
ここまで、話したのでざっくばらんに浴衣が出来るまでの工程を話してみようと思う。

背縫い手前と奥に二本縫う。縫ったら糸こきする。

1mmの「きせ」を折ってつける

脇縫い。

脇の縫い代の処理。きせがが取れないように落とし縫いで止めていく。横の耳の部分も二目落とし縫い。

衽(おくみ)から裾(すそ)にかけて三つ折りにして「くける」。角は額縁縫い。

額縁縫いの45度に合わさるところを細かく「くける」。

90度になっているか確認

額縁縫い終わって、裾を「くける」。

晒しで肩当てを作る。

肩当ての背縫いも二本縫う

きせをかけてアイロンするとこんな感じに。

肩当ての前後の切れ端を三つ折りにして「くける」。

背縫い同士を合わせて縫う。

ざっくり縫って、肩当てがズレないように。

裏の表面に見える縫い留めは綺麗に二か所縫う。

前に来る襟の柄を合わせてから、まち針で留める。

身頃と襟を縫っていく。糸こきをしながら、皺にならないようにする。

「一色当て」を晒しでつくって、背縫いの部分に留めていく。

袂(たもと)の丸みをつける作業。何本も波縫いで糸を出しておく

糸を引っ張りながら、まるみを調節。袖口の方に1mm、袖下の方に5mmのきせをかける。

アイロンでしっかり絞った部分ときせを定着させる。
ああ!私、昔からおっちょこちょいなのです。ここから先の写真が無い。衿納めの本ぐけや共衿の写真も無い。
出来上がりの写真をプレゼントと共に渡し、残していなかったので当時の写真はここまででした。😭
この後は、身頃と出来上がった袖をくっつけて終わりです。どこかで浴衣縫うかな・・・

凄いです、お仕事ではないんですよね。縫い目が揃っていて美しいです。私は綿入れはんてんと綿入れちゃんちゃんこ縫った事があります。とんでもなくガッチャガッチャな糸目になりました。私は仕事柄、くけは毎日やっています。私が出来るのはそれだけ、本当に不器用です。昔は小幅生地の婚礼布団がたくさんありました。母は柄合わせを何気なくやっていました。たまーに自分でやる時無駄が出ないように、大苦戦です。布団は上に向かって右上がりに揃えてました。それにしても本当に素晴らしいです。
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saitouwatatenさん、こんにちは!
コメントありがとうございます。
和裁と洋裁をかじっただけの素人です。
ただ、学校が物凄くスパルタだったので、2年間でありえない量を仕上げました。
和裁は浴衣と半帯、襦袢にウールの着物と帯。洋裁もかなりの量だったのと教免も選択していたので、
当時は2時間睡眠で頑張りました。
写真、本当は縫ってアイロンかけてからの方が見目が良いのですが、ズボラな私らしく当時は写真のこと考えてなかったなと反省。
綿入れはんてんと綿入れのちゃんちゃんこですか?!凄いです!!綿が入る分難しいのですよね!
お仕事でくけがけ凄いです。毎日、くけをされて、作られていくお布団を待ってらっしゃる方がいるって、
すてきなお仕事だなと思います!
前にテレビで綿布団屋さんの特集を見た時、美しい世界だな・・・と感動したのを覚えています。
綿を広げて何層にも重ねていく、そこに布とは違った綿の軽な質感や空気の感覚とか見入っていました!
職人さんが指先やその先の綿に全神経を集中させて広げたり、くけている姿は神聖なものを感じる空気感が漂って
何時までも見ていられます。お母さま、柄合わせを何気なくですか!凄い・・・弟子入りしたいくらいです
そういえば昔、布団屋さんの店先にお布団の和柄の余り布が売られていて、大きめのくるみボタンや小物入れとかにして外国の子に
プレゼントしたら喜んでいたのを思い出しました。
コメント、本当にありがとうございました!
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大事な事を書き忘れました。綿入れはんてんと綿入れちゃんちゃんこはつくば市にある「はんてん屋」さんに教わりに行ったのです。しかも難しいのは先生が手伝ってくれたりやってくれたり、一人では絶対に出来ません。はんてん屋さんは和裁ではなく綿入れはんてん等を教えてくれる教室です。私は1枚で出来ない事を悟り、商売柄頼まれるとはんてん屋さんを紹介しています。ユニークなお店なので良かったら検索してみて下さい。
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saitouwatatenさん、ありがとうございます。
「和布工房・はんてん屋」さんでしょうか、Zoomで教室も受けられるとはハイテクですね!
キットは布の切り込みが入っているのでしょうか、初心者でも挑みやすそうな感じで面白そうです。
立体的かつ服の上から着れるような造形は、学生の頃、授業以外に子供用のはんてんを作っている方を見たのですが、
綿入れで縫い付けて形になっていくのが、造形の美で素敵だなと思います。
素敵なお店を紹介して頂きありがとうございました!
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